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最新政策トレンド(福祉政策分野)
平成24年、「社会保障・税一体改革大綱」が閣議決定され、社会保障とその財源に関する改革が行われています。ここでは、生活保護、子ども・子育て、在宅介護・看護の分野について、最近の政策と行政が保有するデータの活用についてご紹介します。
1.生活保護
(概要)
生活保護は、生活に困窮する国民に必要な保護を行い、最低限度の生活の保障と自立の助長を目的とし、都道府県知事、市長および福祉事務所を有する町村の長が実施する制度です。保護の種類は①生活扶助、②教育扶助、③住宅扶助、④医療扶助、⑤介護扶助、⑥出産扶助、⑦生業扶助、⑧葬祭扶助の8種類とされ、金銭給付または現物給付により扶助が行われます。
制度の根拠となる生活保護法は60年間以上にわたって大きな改正がありませんでしたが、平成25年、①就労による自立の促進、②健康・生活面等に着目した支援、③不正受給対策の強化、④医療扶助の適正化などに資する内容を中心に改正が行われ、扶助の基準が引き下げられました。この背景には、リーマン・ショック(平成20年)以降に、特に現役世代での受給世帯・受給額が急増し財政を圧迫していることや、一部の不正受給の問題、などがあります。
一方、生活保護受給者となることを未然に防ぐための新たな制度(生活困窮者自立支援制度)が平成27年4月からスタートしています。同制度では市町村・社会福祉協議会に相談窓口を設置、生活苦に陥った一人ひとりの状況に合わせて支援プランを作成し、家計相談、就労支援、住居確保、相談者の子どもの学習支援など、多面的な支援が提供されます。格差の拡大、孤独・孤立の増加といった社会の変化が生活困窮を助長していると言われるなか、地域の実情を踏まえた実効性の高い制度運用が今後期待されます。
(データ活用の事例)
2000年代後半の生活保護と地方財政 -市単位データによる分析-
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 林 正義
www.cirje.e.u-tokyo.ac.jp/research/dp/2014/2014cj264.pdf
子ども、子育て
(概要)
社会の少子化に対応するため、平成24年に子ども・子育て3法(子ども・子育て支援法、認定子ども園法の一部改正法、子ども・子育て支援法及び認定子ども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)が施行され、平成27年度から「子ども・子育て支援新制度」がスタートしました。また、平成27年4月1日には少子化社会対策大綱の閣議決定を受けて内閣府「子ども・子育て本部」が発足、今後5年間を「集中取組期間」とし、消費税引き上げによる増収分など合計1兆円超の財源により政府による少子化社会対策が本格化しています。
女性の職場進出、核家族化、地域での人間関係の希薄化等などにより、家庭や地域での子育て力が低下しているといわれています。都市部での「待機児童」や、子どもが減っている地域での保育所統廃合といった問題もクローズアップされています。子ども・子育て支援新制度は、こういった子育てをめぐる近年の課題の解決を目指すものです。
このうち、「子ども・子育て支援事業」では、地域のニーズに応じて多様な子育て支援策が充実されます。
・親子が交流できる拠点の設置数増加
・一時預かりの増加
・放課後児童クラブの増加 等
これらの支援メニューや支援の規模は、市町村が定める「子ども・子育て支援事業計画」により地域ごとに定められます。今後は、計画に基づく事業の効果・成果を正確に把握するとともに、子育てをめぐる地域の状況変化をタイムリーにとらえて随時計画を見直し、地域の子育て環境を持続的に改善していくことが重要と考えられます。
(データ活用の事例)
子育て情報アプリ「ぎゅっと!」
http://www.city.osaka.lg.jp/tennoji/page/0000298903.html
在宅介護、看護
日本の65歳以上の人口は現在3,000万人(総人口の約1/4)を超えており、2042年に約3,900万人でピークを迎えると予想されています。超高齢化は高齢者の医療・介護に対する需要急増をもたらし、このままでは社会保障制度の維持が困難になると予想されています。
そこで、政府は「団塊の世代」が75歳以上となる2025年(平成37年)を目途に、住まい、医療、介護、予防、生活支援を地域で一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を推進しています。地域包括ケアシステムは、高齢者ができる限り住み慣れた地域で在宅を基本とした生活を継続できることを目指すものです。在宅介護・看護は、病院・介護施設など施設系のサービスと連携を深化させながら、今後ますますその重要性を増していくと考えられます。
また、高齢者ができるだけ要介護・要看護とならないようにする取組みは非常に重要になってきます。生活支援・介護予防の役割を担う地域のNPOやボランティア、民間の健康関連企業(配食サービス、スポーツジム、温泉施設など)等が今後重要性を増していくと考えられます。
地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが重要とされています。75歳以上人口が急増する大都市近郊と、高齢者人口の増加は緩やかになるが総人口が減少する地域で課題は異なり、また人口集積、健康関連産業など社会資源の集積の状況によっても地域包括ケアシステムの在り方が変ってきます。地域の実情を地域包括ケアシステムに的確に反映し、持続的な改善を図っていく必要があります。
(データ活用の事例)
医療費増食い止める「呉市モデル」、レセプトと健診のデータを分析
http://business.nikkeibp.co.jp/article/bigdata/20140709/268423/
ビッグデータを活用する健康支援サービス「けんこうコンシェル」、千葉市長が構想語る
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20140416/346907/
~地域別高齢者福祉施策の立案手法に関する研究~